回診

三重北医療センターヘルニアセンターのご案内

当院では、いなべ総合病院ヘルニアセンターと協力し、そけいヘルニアに対し、腹腔鏡下手術を主軸とした三重北医療センターヘルニアセンター開設いたしました。そけいヘルニアでお困りの患者様はお気軽にご相談ください。

 

そけいヘルニア(脱腸)とは

そけいヘルニアは一般的に「脱腸」と呼ばれ、足の付け根(そけい部)から小腸などの臓器が飛び出してくる病気で、日本では年間に15万人の方が手術治療を受けている一般的な病気で、両性の疾患です。男女比は4〜6対1と男性に多く、当院のデータでも殆どの方が男性です。

男性は、生まれる時に、胎児のお腹の中でできた睾丸がお腹の壁を通り抜けて陰嚢内に収まります。その後、睾丸が通り抜けたトンネル(そけい管)は筋肉の成長とともに閉鎖されます。しかし、加齢に伴い筋肉が弱くなると一度閉鎖したトンネルが再び開いてしまい、腹膜が伸びて脱出し、そけいヘルニアを発症します。そけいヘルニアが圧倒的に男性に多いのはこのためです。

そけいヘルニアの症状

初期症状としては、そけい部の違和感や痛みで、長時間の立ち仕事で悪化し、横になることで症状が改善することがほとんどです。また、徐々に穴が大きくなると、飛び出す内容(腸や脂肪など)が増え、そけい部が膨らんできます。多くの場合、横になったり、膨らんだそけい部を手で押さえると内容物はもとに戻りますが、穴の締め付けが強い場合には戻らなくなることがあります。これは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれており、強い痛みを伴います。嵌頓状態を長時間放置した場合は、腸閉塞や腸の壊死を起こし、命にかかわる緊急手術が必要になります。

 

そけいヘルニアの種類

そけいヘルニアは腸が飛び出す経路の違いから3つのタイプに分かれます。
  1. 外そけいヘルニア
    睾丸が通り抜けたトンネルであるそけい管から腸が脱出するタイプで、男性に多くみられます。
  2. 内そけいヘルニア
    そけい管を通ることなく、筋肉(筋膜)が緩んだ場所から腸が脱出するタイプで、高齢者に多くみられます。
  3. 大腿(だいたい)ヘルニア
    足に向かう血管が通る大腿管と呼ばれる大血管と神経の通るトンネルから腸が脱出するタイプで、女性に多くみられます。加齢や出産などで筋肉や筋膜が緩んだり、重たいものを持つなど腹圧がかかるような状態が続いたときにおこり、嵌頓しやすいのが特徴です。


そけいヘルニアの治療

成人のそけいヘルニアは自然に治ることはなく、手術が唯一の治療法です。嵌頓すると、重症の場合には、緊急開腹腸切除が必要となり、腹膜炎を併発した際は、命にかかわる状態となる可能性があり、早めの手術をお勧めします。

手術方法はメッシュを用いて腸が飛び出す入り口をふさいで修復(補強)する方法が主体で、従来法であるそけい部切開法と当センターが主軸とする腹腔鏡下手術があります。

  1. そけい部切開法
  2. そけい部を5〜6cm程度切開して、メッシュを用いて修復します。麻酔方法は腰椎麻酔(下半身麻酔)で行います。

  3. 腹腔鏡下手術

    腹腔鏡下ヘルニア修復術と呼ばれる手術方法です。お腹に5〜10mmの小さな穴を3ヶ所あけ、その1つからカメラである腹腔鏡を、残りの2つから手の代わりである鉗子を入れて、テレビモニターを見ながら手術を行います。

腹腔鏡下手術は、お腹の中から観察するためヘルニアの場所が正確に把握でき、メッシュによる確実な修復が可能です。このため、そけい部切開法と比べ再発率が低いのが特徴です。麻酔方法は全身麻酔で行います

当センターでは、2014年1月より腹腔鏡下ヘルニア修復術を導入しておりますが再発を認めておりません。また、導入翌年以降は腹腔鏡下ヘルニア修復術の割合が徐々に増加してきています。

腹腔鏡下ヘルニア修復術のメリット・デメリット

メリット
  1. 傷は3ヶ所になるが、それぞれの傷が小さいために痛みが少ない
  2. 鼠径ヘルニアの穴を正確に把握し、メッシュによる確実な修復ができる
  3. 両側であっても、同じ傷で同時に手術ができる
デメリット
  1. 全身麻酔が必要となる
  2. 全身麻酔での手術であるため、心臓や肺などに異常があると全身麻酔がかけられず行えない
  3. 腹腔鏡手術であるため、お腹の中に強い癒着があると行えない

そけいヘルニア手術の合併症

  1. 水腫(血腫) 腸が飛び出していた袋の入り口をメッシュで塞ぐ手術のため、その袋の内に水(血)が溜まることがあります その場合は、腸が飛び出していたときと同様に体の表面からは膨らんでみえます 多くの場合は数ヶ月で自然に吸収されて治ります
  2. 疼痛・違和感 傷の疼痛は個人があるものの数日で改善します メッシュによる疼痛や違和感を感じる方がいますが、多くの場合は短時間で改善します
  3. 再発

    そけい部切開法と腹腔鏡下手術の全国平均で再発率は数%と言われています。が、腹腔鏡下手術のほうが再発率は低くなっています
    そけい部切開法:5~35%
            2000年前後まで主流だった筋肉を縫い合わせる手術:10~35%
            2010年ごろまで主流だったメッシュ法:5~10%
    腹腔鏡下手術:2~3%

そけいヘルニア外来の受付時間

ヘルニア外来は毎週月曜、水曜の9:00~11:30に行っています
そけいヘルニアの種類、年齢、既往歴、全身状態などに応じて、相談しながら最適な治療法を選択していきます
専門外来以外でも月曜から金曜の午前の外科外来でも受け付けております

ヘルニアかどうか悩んでいる方、治療方法、入院期間、金額など聞きたいことがある方など、お気軽に受診、ご相談ください